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世界各地から報告 現地レポート

2015/6/10

フィラリアとの闘い、ウガンダにおける「共同作業」

著者:右中央

レポーターProfile
木村英作
大阪大学微生物病研究所分子原虫学分野 特任教授

 2014年10月~11月、ウガンダ北部のグル県とその周辺地域でフィラリア症の感染状況調査を行った。雌フィラリア成虫が産み出す仔虫(ミクロフィラリア)を顕微鏡で見つけて感染を診断するが、ミクロフィラリアは夜間に血中に出現するので夜間(ここでは利便性を考慮し、午後8時半開始とした)採血が必要である。流行地の村々では電気が無いので石油ランプの下で指先から数滴の血液を採取する。10-11月は雨季の最中。澄んだ星空が突然消えていきなり土砂降りが始まるのは毎度のこと。村人はそれを覚悟で、暗い山道を辿って指定場所にあつまり、暗闇の中、不平も言わず根気よく順番を待ち、そして痛い採血にじっと耐えてくれる。今回は総計1,000人を超える村人の協力が得られた。
 世界規模のフィラリア症制圧プログラムが進展し、ウガンダにおいても集団治療により感染者数は減少している。この減少を正確に把握するには血液検査を繰り返さなければならないが、すでに低感染地となった所では、数人の感染者を見つけ出すために数百人の村人から採血することになる。さらにウガンダのフィラリア症が制圧されたことを確認するためには、数万人の検査を行って感染者がいないことを確認しなければならない。自分は感染していないと思っていても、地域全体のために薬を飲む、そして血液検査に協力するという人々の「共同作業」が世界規模で実施されているのである。村人の協力に心より感謝しつつ仕事を続けた。
 適切な治療によってフィラリア症感染を阻止することは可能である。そして製薬業界の協力で、毎年数億人の人々を治療できる抗フィラリア薬の入手も可能となった。かつてを思うと夢のような話である。しかし、フィラリア感染が無くなっても象皮病や陰嚢水腫が直ちに無くなるわけではない。調査中に診察してほしいと大きな足を差し出す患者さんが頻回に訪れた。象皮病は患部の細菌感染によって悪化するのだが、彼(彼女)等の多くは裸足で生活を送っている。病気と貧困の連鎖を断ち切るため、「世界共同」のさらなる発展を心より祈っている。

夜間の血液検査
村に向かうフィラリア症調査チーム。雨季の雨で立ち往生
 
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