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世界各地から報告 現地レポート

2019/3/15
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スーダン マイセトーマ治療薬E1224治験サイト訪問

レポーターProfile
畑 桂
hDAC グローバルヘルス研究室

 マイセトーマ(菌種)は、アフリカ、インド、中米に跨るマイセトーマベルトと呼ばれる地域で流行する、徐々に組織を破壊する深刻な感染症・炎症疾患です。これまで、その存在すらほとんど知られておらず、最も顧みられない熱帯病と呼ばれています。エーザイは、2017年よりアフリカのスーダンにおいて、グローバルヘス技術振興基金からの助成金を利用して、Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDiと共同でE1224のユーマイセトーマ(真菌性菌種)に対する臨床第二相試験を実施しています。2018年夏、我々は、治験が実施されているハルツーム大学・マイセトーマリサーチセンター(MRC)およびマイセトーマの流行地域であるセンナ―ル州ワド・オンサを視察訪問する貴重な機会を得ました。

 MRCでは、治験主導医師であるAhmed H Fahal 教授から治験状況の説明があり、その後、施設見学が行われました。MRCには、通常一日に200人ほどの患者様が訪れるとのことで、この日も待合室は多く患者様で混みあっていました。松葉杖を使っている人も多く、手術で足を失っている患者さんも散見されました。Fahal先生は、現在の治療薬が毎日の服薬が必要なのに対して、E1224は一週間に一度の服薬で済むので、効果が確認できれば、服薬コンプライアンスの観点からも、医療費の観点からも患者様に大きな恩恵をもたらすであろうとコメントされていました。また、現地でマイセトーマ患者様の支援活動を行う国際NGOの難民を助ける会(AAR)に対して、感謝の言葉を述べられました。(AARの活動はサポーターからの現地レポートに掲載)

 翌日、MRC医療団と共に、車で5時間のドライブ後、4輪駆動車に乗り換えて、さらに2時間ほど悪路を走り、青ナイル川の近くのマイセトーマ流行地域であるセンナ―ル州、ワド・オンサに到着しました(ハルツームから南南東に400km)。そこに少規模な診療所があり、現在MRCの医療団が3か月に一度訪問して、周辺20村の住民に医療を提供しています。治療は外科手術が前提であり、毎週10~20人が新たにマイセトーマ患者と診断され、通常50人規模の手術が実施されるそうです。この日はひとりの外科医が、朝から11人の手術を行ったということでした。生後2か月の子供がマイセトーマと診断されたこともあり、疫学や感染経路などは全く分かっていないようです。再発を繰り返しているという患者様や足の裏が酷く腫れている患者様を間近に視て、E1224がこうしたマイセトーマ患者様を治癒に導くことができれば、それは大変素晴らしいことだと感じました。帰りの車の中で改めて実感したことは、臨床試験に参加するためにワド・オンサ周辺からMRCまで移動することは、マイセトーマ患者さんにとって、肉体的にも精神的にも大変な負担になるということです。彼らの負担軽減のために何ができるか、知恵を絞らなければならないと強く感じました。

診察を待つ患者様 – GHIT Fund
マイセトーマの患部

 今回の訪問を通し、遥か遠いアフリカ・スーダンの地で、我々が研究開発に携わったE1224の臨床試験が実際に実施されており、マイセトーマ患者様の治療に使用されていることを確認することができ、感慨もひとしおです。しかしながら、マイセトーマ治療薬開発はまだ道半ばです。今でも多くのマイセトーマ患者様が苦しんでいます。臨床試験を成功させ、その後の薬剤供給などについてもパートナーと一緒に考えなければなりません。まだまだゴールは先ですが、それに向かって邁進していきたいと思います。最後に、今回、本企画を主導して下さり、大変貴重な体験をさせていただいたDNDiの皆様に感謝致します。

 
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