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2018/4/6

タイでの15年間にわたるリンパ系フィラリア症制圧への取り組み

レポーターProfile
チャンチャイ ウォンチャロン
Eisai (Thailand) Marketing Co., Ltd.

 2017年9月、タイは公衆衛生上の課題であるリンパ系フィラリア症(lymphatic filariasis, LF)を制圧したことを、世界保健機関(World Health Organization, WHO)より認定されました。保健省の昆虫媒介疾病対策局は、2002年よりLF集団投薬プログラム(Mass Drug Administration, MDA)を開始し、2013年に11州で制圧を達成しました。その後、WHOガイドラインに従って4年間のモニタリングと評価期間を経て、2017年に制圧基準を満たしたことが確認されました。

WHO事務局長Tedros Adhanom氏(右)、WHO東南アジア地域事務局長Dr. Poonam Khetrapal Singh(左)がタイの公衆衛生副大臣Dr. Thawat Suntrajarnに制圧認定証を授与した
写真提供 保健省

 エーザイのタイにおける子会社のEisai (Thailand) Marketing Co., Ltd.は、LF制圧に向けた15年間の取り組みについて、タイ保健省の昆虫媒介疾病対策局に話を聞きました。
 ジエチルカルバマジンクエン酸塩(DEC)とアルベンダゾールを用いた集団投薬プログラムは、11州357の実施ユニットに住む約15万人を対象に、年に1回、少なくとも5年連続で行われました。集団投薬は、様々な課題に直面しながらも、2002年から毎年4月の「フィラリア・ウィーク」に実施していました。しかし、2004年にタイの南部、特にナラティワートで反政府勢力が起こした暴動は、LF制圧の進捗に深刻な影響を及ぼしました。反政府勢力は毎日のように爆撃を行い、集団投薬プロジェクト実施担当者は蔓延地域に入ることが困難になりました。そのため、最後の暴動地域である蔓延地域では、通常の5回のMDAではなく、約10年をかけて11回のMDAを実施しました。これらの地域では、州政府の公衆衛生部門からトレーニングを受けた医療ボランティアの活躍によって、新規感染患者数を減少させることに成功しました。例えばナラティワートでは、集団投薬を毎年実施したものの、プログラムのカバー率が低く、苦戦していました。しかし、医療ボランティアの協力により、カバー率が改善し、最終的にプログラムを成功させることができました。また、医療ボランティアは集団投薬の実施だけでなく、地域住民のフィラリア感染率を測定するための血液検査にも重要な役割を果たしました。現在、ナラティワート地域では、LF患者はわずか20名であり、WHOガイドラインに基づき治療を受けています。さらに、定期的にペットをランダムに選び、感染の有無を検査し、感染が確認された場合に治療しています。

医療ボランティアのトレーニングを行い、MDAを準備しているところ
写真提供 保健省
2006年に実施したMDA
写真提供 保健省

 タイはLF感染率を低下させることに成功しましたが、ミャンマーとタイの国境付近では、ミャンマーからの多くの労働者がタイへ流入しており、LFの再感染のリスクが高まることが懸念されています。タイはミャンマーの労働者に対し、感染調査を実施し、再感染を防止するためにLF治療を継続しています。

 保健省昆虫媒介疾病対策局Dr.Preecha Prempree,保健省上級保健技官兼LFプログラムマネジャーMs. Sunsanee Rojanapanusに、本インタビューを受けていただいたことに御礼を申し上げます。

 
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