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世界各地から報告 現地レポート

2017/7/12
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シャーガス病 適切な治療へのアクセスを増やす

レポーターProfile
イザベラ リベイロ 医師
サイエンティフィックリード
ダイナミックポートフォリオユニット
顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ
Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)
ジュネーブ、スイス

 シャーガス病は主にサシガメという昆虫との接触によって感染します。サシガメは一般的に田舎や郊外の粗末な造りの家の天井や壁の割れ目に潜んでいます。輸血や臓器移植、また母子感染もその原因となり、さらにサシガメにより寄生虫に感染した食物の摂取による経口感染も報告されています。疾患の急性期症状は、ほとんどの患者で自然に消滅します。感染から数十年の間に、患者の約20〜30%が心臓および消化器で生命を脅かす可能性のある合併症を伴って臨床的に明らかな慢性症状を発症します。

Fabio Nascimento – DNDi

 最近まで、シャーガス病はアメリカ大陸、主としてラテンアメリカに限られた病気でしたが、時間の経過と人の移動により北米、ヨーロッパにも病気が広がりました。病気の分布や影響は国ごとにまちまちです。二つの例を挙げてみます。ボリビアでは、1000万人の人口のうち約6%が感染していると推定されています。この国には成人の感染率が60%に及ぶ地域もあり、非常に多くの人々がシャーガス病の影響を受けている可能性があります。ブラジルでは人口の0.03%が感染していますが、人口が約2億人ですから、実際の感染者数はとても多いことになります。しかし、このような数字は推定値でありバラツキがあり、更には慢性期の患者はしばしば無症候性であることから、より正確な罹患者数の把握のためには、精密な血液検査を伴う疫学調査を行わなければ難しいと言えます。

診断と治療の効果を最大にする

 現在、シャーガス病に関わる最も重要な仕事の一つは既存治療と診断へのアクセスの改善です。シャーガス病患者さんのほとんどは無症状のため、ほんの一握りの感染者が見いだされ治療を受けているに過ぎません。人数は不確かですが、現在の選択肢であるbenznidazoleまたはnifuritioxによる治療を享受できているのは、シャーガス病患者の1%にも満たないと考えられます。いくつかの問題を抱えていますが、現状に変化をもたらすには、分野横断的に一致団結したアクションが必要です。
薬剤の効果に関するエビデンスが増え、様々な制圧活動が実施されているにもかかわらず、多くの蔓延国に医療や制圧に向けた活動指針が提供されていません。シャーガス病が蔓延する全ての国で、シャーガス病に対して世の中に既にある薬剤が確実に承認されることが必要であり急務である一方、どのような薬剤の配送管理モデルが現場に最も大きな効果をもたらすかを評価することも大切です。DNDiはコロンビア、メキシコ、米国において、それぞれの保健省や主要なパートナーとともに、地域の保健システムに合わせて、大規模に診断と治療を実施した場合の効果についての評価を行う一連の初期プロジェクトに着手しています。またこうした医療の様々な供給モデルを行政、学術研究機関、そして市民社会の各ステークホルダーと共に評価することで、持続的で応用可能なモデルを見出すことを期待しています。

 DNDiはGlobal Chagas Disease Coalition(国際シャーガス病連合)の一員として他のパートナーとともに、全ての年齢層、特に幼児、小児、出産可能年齢の妊娠していない女性への診断と治療へのアクセスを増やすことを強く提唱しています。最近のデータでは、出産可能年齢で妊娠していない女性を治療することにより妊娠中のシャーガス病の感染を防ぐことができ、シャーガス病をコントロールする重要な戦略となるという強いエビデンスが生み出されています。慢性期の患者の診断および治療状況の把握、使用した医薬品の安全性監視、治療や臨床効果、シャーガス病の疫学および分布をより理解するための長期にわたる経過観察を実施することを支える国際的な登録システムが必要です。

Fabio Nascimento – DNDi

ボリビアの現場から

 若いお母さん、マリアは3年前にシャーガス病と診断されました。彼女の赤ちゃんもまた生まれながらにしてシャーガス病と診断されましたが、二人で治療を始めました。検査結果によると赤ちゃんはbenznidazoleによる治療が成功し完治しました。子供の治療成功率は90%を超え、忍容性は大人より高いのです。2010年、DNDiとパートナーは、子供の治療を容易にするためにbenznidazoleの小児用製剤を供給しました。

Fabio Nascimento – DNDi

現在の治療とその限界

 現在の治療法である、benznidazoleと nifuritimoxは感染の急性期及び慢性期に効果があります。これら薬剤の広範な使用は、その実施をサポートするガイドラインや指針がないため制限されていました。治療が普及しないさらなる理由としては、長期の治療期間(60-90日)、用量に依存して顕れる毒性、そして副作用による患者さんの治療脱落率の高さ(17-20%または2割)があげられます。また、病勢が進展し、臓器不全にまで至ったような慢性期に使える治療薬は、現在までに承認されたものがありません。

 
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