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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

失明に至るトラコーマ

<トラコーマの患者の様子> CDC

クラジミア・トラコマチスという微生物が、主にハエなどに媒介され、感染した眼の分泌物などから、健常な眼に感染しておこる結膜炎です。繰り返し感染すると失明に至ることもあるため、「失明に至るトラコーマ」と呼ばれています。主に開発途上国で発生しており、2016年に世界保健機関(WHO)が発表したデータによると、トラコーマによる失明あるいは視力障害者数は190万人になりました。

感染原因

病原体

微生物のクラミジア・トラコマチス

<クラミジア・トラコマチス> CDC

媒介昆虫

主にハエ

<ハエ>
*この種に特有ではなく蔓延地域のハエ全般
Gary D. Alpert
CDC

 クラミジア・トラコマチスという微生物が、トラコーマ感染者の手、衣類やタオルなどを通して、あるいは感染者の目や鼻にとまったハエが媒介して感染します。
 病原体は人との接触で容易に運ばれるため、集団感染がよく見られます。中でも、目をよく触り、自分で顔を洗えない子供たちは感染しやすく、その子供の母親への感染例も多く見受けられます。水不足の環境やハエが群生している不衛生な環境などで、より発生しやすい傾向があります。

症状

 トラコーマの症状は大きく2段階あります。

<トラコーマの患者の様子> CDC

初期症状

 上まぶたの瞼結膜(けんけつまく。まぶたの裏を覆う部分)に粟粒のようなぶつぶつが現れます。この粟粒が大きくなって破裂すると、瘢痕組織(はんこんそしき)といわれる白い線や星形の組織が現れます。

 
次の段階

 上まぶたの瞼結膜の炎症が進み、赤くでこぼこに分厚くなります。長期的に繰り返し感染することで、まぶたが眼球側にまくれ込んでいき、内側に入り込んだまつ毛が恒常的に角膜を傷つけていきます。これは痛みを伴う上、角膜混濁や視力低下をまねき、やがて失明に至ることがあります。
 子供時代に感染し、その後繰り返し感染することで30〜40代の大人になって失明するケースが多いのですが、子供との接触が多い中年以上の女性でも多く発症する傾向にあります。

 

治療方法

 治療方法には、薬剤を使用するケースと手術をするケースがあります。

薬剤治療

 治療薬には、アジスロマイシンおよびテトラサイクリン系軟膏があります。
 トラコーマは非常に感染力が強いため、アジスロマイシンをはじめとする抗生物質が有効です。軽度の場合には、アジスロマイシンを数回服用するだけで充分と言われています。ただし、6カ月以下の乳幼児には、微量のテトラサイクリン系軟膏をアジスロマイシンと併用します。
 テトラサイクリン系軟膏は、1日2回6週間継続して目に直接塗付しますが、痛みを伴うため患者に継続的に使用してもらうことが困難な場合があります。加えて、炎症を抑えることはできても、再感染率が高いため、アジスロマイシンへと移行する傾向にあります。

 
手術

 内側にまくれ込んだまぶたについては、簡易な手術で治療が可能です。

 

予防方法

 清潔な水で手や顔を洗うことが、基本的かつ重要な対策です。
 コミュニティ全体での対策としては、トイレの完備、ハエの繁殖を抑える対策、安全で衛生的な水や食料の確保、動物と人の住居の分離といった、より衛生的な環境の整備が必要です。

感染リスクのある地域

 トラコーマの98%は開発途上国で発生しており、開発途上国の中でも、劣悪な衛生環境、水や医療サービスの不足、貧困などの問題を抱えている地域で感染リスクは高くなっています。2016年にWHOが発表したデータによると、アフリカ、中南米、アジア、オーストラリアおよび中東などの42カ国での発生が報告されています。特に感染の高い地域では、就学前の児童の60〜90%が感染していると推定されます。

推定感染者数

 2016年にWHOが発表したデータによると、トラコーマによる失明あるいは視力障害者数は190万人になりました。特に5歳以下の子供や、感染した子供の世話をする成人女性で多く感染者が見られます。

推定死亡者数

 トラコーマを直接的な原因として死に至るケースはほぼ皆無です。

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

 トラコーマの治療と制圧のための国際的な活動は、WHO(世界保健機関)の「SAFE」戦略に基づいて実施されています。 この戦略は、次の4つの要素で構成されています。

  • S:手術(Surgery)による睫毛乱生症(内側に入り込んだまつ毛が眼球に触れ、角膜を傷つけて失明を引き起こすトラコーマの最終段階)の治療。
  • A:抗生物質(Antibiotics)による感染者の治療(アジスロマイシン)。
  • F:洗顔(Facial cleanliness)による身体の衛生の向上と感染リスクの低減。
  • E:環境(Environment)の改善によるきれいな水と公衆衛生へのアクセスの向上。

 WHOは、1996年からトラコーマによる失明を撲滅するための取り組みを行っています。これはWHOが進めているVision2020(主要失明疾患対策)の一つの取り組みであり、2020年までにSAFE戦略に基づきトラコーマを制圧するという目標を掲げています。これをGET2020(Global Elimination of Trachoma by the Year 2020)と呼んでいます。
 SAFE戦略の一環として実施された事例として、モロッコでアジスロマイシンを用いた大規模な制圧プログラムが実施されました。WHOとそのパートナーはSAFE戦略の実行をサポートし、トラコーマ制圧に向けて協働しています。

ファイザー社

 上記のトラコーマ制圧プログラムのWHOの主力パートナーです。1998年にEdna McConnell Clark財団とともに国際トラコーマイニシアティブ (ITI:International Trachoma Initiative)を設立し、アジスロマイシンを2020年まで無償で提供しています。ほかにも、研究や治療、予防、啓発といった、総合的な対策にも着手しています。

ライオンズクラブ国際協会

 視力ファースト・プログラムという失明撲滅のための取り組みを展開しています。その一環として、エチオピアのライオンズクラブ、エチオピア政府、ファイザー社、カーターセンター(カーター米国元大統領が設立)などの支援を得て、トラコーマの治療薬であるアジスロマイシンを1000万人のエチオピアの人たちに投薬するなどの活動を行っています。
 また2012年のロンドン宣言で、2017年までにトラコーマを撲滅するという中国政府の取り組みに690万ドルの資金を提供すると発表しています。  

参照情報
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/