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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

マイセトーマ

<マイセトーマ患者さんの写真> CDC

マイセトーマ(菌腫)は慢性的、進展性に組織を破壊していく深刻な炎症性疾患であり、患部としては足に多く見られますが、足以外のどの部位においても起こります。多くの場合、原因となる細菌や真菌が傷口から皮下組織に侵入することで感染すると考えられています。マイセトーマについての記述は古くから見られますが、正式な論文報告は19世紀半ばにインドのMaduraという町での患者に関するもので、そのため当初Madura foot病と呼ばれていました。マイセトーマの患者は多くが発展途上国の特に20代から40代の男性であり、中でも肉体労働者、例えば農夫などに多く見られます。マイセトーマは2016年5月に開催された世界保健総会(World Health Assembly)において、18番目のNTDとし公式リストに収載されました。

感染原因

病原体

細菌(アクチノマイセトーマの場合)、真菌(ユーマイセトーマの場合)

<細菌 Nocardia brasiliensisの顕微鏡写真>CDC

<真菌 Madurella mycetomatisの顕微鏡写真>CDC

宿主

感染源となる特定の宿主や保有動物は知られていない

 マイセトーマは細菌あるいは真菌の長期的な感染によるもので、細菌による場合をアクチノマイセトーマ(Actinomycetoma)、真菌による場合をユーマイセトーマ(Eumycetoma)と区別しています。マイセトーマを引き起こす原因菌としてどちらの場合も複数の種類が報告されていますが、細菌としてはNocardia brasiliensis, Actinomadura madurae及び Streptomyces somaliensisなどが知られ、一方で真菌としては20種あまりある中でMadurella mycetomatisが最も多く見られます。感染は小さな外傷やトゲなどによる刺し傷から原因菌が侵入することで生じると考えられており、マイセトーマの罹患者の多くが裸足で歩く肉体労働者であることはそれを裏付けています。なお、人から人への感染はないと言われています。

症状

 マイセトーマは一般的にはゆっくりと進行し、痛みのない皮下の病巣が増幅するとともに、感染菌である細菌あるいは真菌の粒子状の塊を含む滲出液を分泌するという特徴を示します。典型的には初発感染部位が足の場合が最も多いものの他の四肢にも拡大することがあります。未治療のまま放置すると身体障害、外観の変形(及びそれに伴う社会的差別)を招き、もし傷口からの二次感染が起こりそれが敗血症に至れば生命を失うことになります。蔓延地域においては保健医療インフラ、健康教育が乏しいことに加えて、痛みがなくゆっくりと進行する症状のために、多くの患者は病態が非常に悪化した状態になってはじめて病院を訪れますが、その段階では外科的に患部を切除あるいは手足を切断することのみが唯一の効果的な治療法となっている状況です。

<マイセトーマ患者さんの写真> CDC

治療方法

診断方法

 マイセトーマの診断は、外科的に生検した組織あるいは患部から分泌された膿の中に原因菌を検出することで行います。菌の粒子状の塊を顕微鏡で観察することも一つの方法ですが、必ずその菌を培養して原因菌の種類を特定することが重要です。その他にもDNA配列や各種イメージング技術を使用することも可能ですが、蔓延地域では通常それらの技術は使えません。現地で簡便にできる診断法は未だにないのが実情です。

 
治療方法

 外科手術による患部切除以外の、薬物による治療法は、原因菌の種類によって異なります。細菌によるアクチノマイセトーマの場合、抗生物質が有効で、アミカシンとトリモキサゾールの併用により90%以上の患者が治癒可能とされています。一方、真菌によるユーマイセトーマの場合、アゾール系抗真菌剤が治療に用いられていますが、約25-35%の治癒率とされしかも再発率が高いことが経験されています。そのため、ユーマイセトーマの治療は抗真菌剤の長期投与(12ヶ月以上)と外科手術が併用されます。ただし、抗真菌剤としては、従来使われてきたケトコナゾール(経口薬)が重篤な肝毒性のおそれから欧米の規制当局(EMA, FDA)により事実上使用禁止とされ、現在ではイトラコナゾールのみが頼みの綱となっています。しかし、この薬剤も長期の服薬が必要で、副作用の問題があるうえに効果は限定的です。コスト負担の問題もあり、50%以上の患者さんは治療が未完了となってしまい、それが再発そして切除や切断手術に至る事態を招いています。

 

予防方法

 マイセトーマを制御あるいは予防するための有効な取組みはまだない状況です。感染を完全に予防することは難しいといえますが、蔓延地域に居住あるいは訪問する場合は裸足で歩かないよう注意すべきでしょう。

感染リスクのある地域

 マイセトーマの原因菌は世界中に分布していますが、特に蔓延しているのは、熱帯あるいは亜熱帯の「マイセトーマベルト」と呼ばれる帯状の地域で、ベネズエラ、メキシコ、インド、イエメン、エチオピア、ソマリア、スーダン、チャド、セネガル、モーリタニアなどの国が含まれます。

推定感染者数

 マイセトーマは法律によって報告が義務付けられている疾病ではなく、患者の有無を監視調査する体制も取られていないために、患者数、発生数ともに把握できていません。但し、2013年に報告された論文において、1956年以降の50の信頼できる論文から患者数を集計したところ8,763例であり、その約75%はメキシコ、スーダン、インドに集中しているとされています。しかしながら、この集計は、国ごとに一つの病院のみを選びそこを訪れた患者の数のみをカウントしているため、実際の患者数はそれより遥かに多いことが推測されます。

推定死亡者数

 マイセトーマによる死者数は推定されておりません。

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

エーザイ

 2015年9月より、マイセトーマの新しい治療法に関する研究開発プロジェクトを国際的な非営利団体Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)と共同で開始しました。スーダンにおいて、エーザイの保有する抗真菌剤E1224(ホスラブコナゾール)を用い、DNDiが治験を行います。

参照情報
WHO- Mycetoma, accessed February 13, 2017
http://www.who.int/buruli/mycetoma/en/
ISNTD Disease Brief, 'Mycetoma: The case for a new entrant to the WHO's list of Neglected Tropical Disease'; Mark Clark (April 2016)