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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

ハンセン病

<ハンセン病患者 足の障害の一例> CDC

ハンセン菌を病原体とし、人に感染する細菌感染症です。皮膚や神経、粘膜を冒し、早期発見および治療を行わないと、顔や手足に外観を損なう障害が残ることがあります。世界的に発症ケースは減少しており、世界保健機関が発表したデータによると、2015年にハンセン病として登録されたケースは176,176例でした。日本では “らい病”として、近年まで患者が隔離されたり強制的に療養所へ入所させられたことで知られている疾患です。

感染原因

病原体

ハンセン菌(らい菌とも呼ぶ)

<ハンセン病患者の皮膚中のハンセン菌の顕微鏡写真> CDC

保虫宿主

ねずみ、ココノオビアルマジロ

 ハンセン菌はねずみの足裏やココノオビアルマジロの体内で増殖します。人の体内にハンセン菌が入ることにより感染しますが、明確な感染経路はまだ判明していません。呼吸、咳、くしゃみによる飛沫や分泌物によって、ハンセン菌が人から人に感染しているのではないかと考えられています。
 感染力は弱く、人に感染してからの増殖スピードもきわめて遅く(ほぼ13日間ごとに増殖します)、症状が出るまでに2年から10年(あるいは20年)かかります。人に感染すると、主に、皮膚、神経、粘膜組織を侵し、見た目を損なうことがあります。

症状

 ハンセン病は長期にわたる感染症です。症状も多岐にわたりますが、一般的には皮膚、神経、上気道、眼に慢性的な症状を起こします。
 ハンセン病は少菌型と多菌型に分類されます。

<ハンセン病患者 足の障害の一例> CDC

少菌型

 症状がより穏やかで1カ所以上の知覚脱失を伴った脱色素斑(白あざのようなもの)、あるいは紅色皮疹(赤い発疹のようなもの)が現れます。

 
多菌型

 5カ所以上の皮膚の病斑(主に淡紅色)、丘疹、結節、プラークなどに加えて、鼻づまりや鼻血といった鼻粘膜の症状を伴います。皮膚の知覚脱失障害を伴わない場合もあります。

 

 いずれも、上記に加えて筋肉の衰え、麻痺(特に手足)、盲目になりうる眼障害、皮膚の肥厚、足裏の潰瘍なども見られます。治療をせず放置すると、神経障害や筋肉の委縮や衰弱、身体障害に至ることがあります。

治療方法

 早期発見および治療により、完治します。

診断方法

 WHO(世界保健機関)によると、下記の3点にあてはまる場合、ハンセン病と診断されます。

  • 明らかに知覚がない(知覚脱失)、脱色素または紅色皮疹がある。
  • 知覚脱失を伴う明らかな末梢神経肥厚がある。
  • 皮膚の抗酸菌塗抹検査で陽性となる。
 
治療方法

 少菌型・多菌型のいずれの場合でも、多剤併用療法(ダプソン、リファンピシン、クロファジミン)で、半年から1年間程度の治療を行います。
 この治療の効果は非常に高く、再発のリスクも低く、菌の耐性もありません。いずれの薬剤も、副作用として薬剤アレルギーによる皮膚に激しい痒みを伴う赤色または暗い色の発疹ができることがあります。この場合は服用を中止し、医療機関に受診することを薦めます。

 

予防方法

 ハンセン病の感染および身体障害を予防するためには、早期診断と多剤併用による治療が重要です。

感染リスクのある地域

 世界的にはハンセン病の発症ケースは減少していますが、いまだ感染が多く見られる地域を抱えている国もあります。たとえば、インド、ブラジル、インドネシア、アンゴラ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、マダガスカル、モザンビーク、ネパール、タンザニア連合共和国やフィリピンがそれにあたります。中でも、インドの報告例が全体の過半数を占め、これにブラジル、インドネシアなどが続きます。

推定感染者数

 2010年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)が発表したデータによると、世界で100〜200万人の人がハンセン病で生涯にわたる身体障害を抱えていると推定されています。
 2008年の新規患者数は約25万人でしたが、2013年の4月〜6月では、ハンセン病として登録されている患者数は約19万人となり、患者数は減少傾向にあります。1985年の時点で、ハンセン病が国家的課題であった122カ国のうち、119カ国でハンセン病の制圧に成功しました。

推定死亡者数

 ハンセン菌を直接の原因として死亡することはありませんが、適切な治療をしなかったり、感染の発見が遅れたりすると、一生にわたり身体障害が残る可能性があります。

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

 日本におけるハンセン病の歴史は驚くほど古く「日本書紀」や「今昔物語」にもハンセン病を示す「らい」という記述があったといわれています。明確な原因や治療法が見つからなかったことや、顔や手足に激しい障害が現れることから、ハンセン病は恐ろしい病気とみなされ、患者は隔離・排除などの差別を受けていたこともありました。
 1940年代には、ようやくアメリカのファジェイ博士によってグルコスルホンナトリウムという薬の有効性が認められ、1950年代からは、グルコスルホンナトリウムの後継薬のダプソンが世界中で使用されるようになりました。しかし、ダプソンによる治療には長期間を要し、かつ1960年代には、ダプソンの耐性菌が発生してしまいました。ここから長期間の研究を経て、1981年にWHOの研究班が多剤併用療法(別名MDT)を確立しました。
 WHOでは、1995年から日本財団の協力により、また2000年からはノバルティスによりすべてのハンセン病患者にMDTの薬剤を無償提供しています。また、世界救らい団体連合(ILEP)(日本の所属団体は笹川記念保健協力財団)や多くのNGOもハンセン病制圧に協力しています。
 WHOは2016年に新たな世界戦略「ハンセン病の世界戦略2016-2020:ハンセン病のない世界への加速」を発足させました。その戦略は、特に蔓延国において罹患している子供に焦点をあて、ハンセン病のコントロールに向けた努力と身体の障害を防ぐことを再度活性化することが目的です。

ノバルティス

 2020年までWHOを通じて、多剤併用療法に必要な3つの薬剤(ダプソン、リファンピシン、クロファジミン)の薬剤を無償で提供します。また、医薬品の提供にとどまらず、他の支持団体とともに、世界のハンセン病制圧に向けて総合的な活動を行っています。2013年、ノバルティス財団は伝播を阻止させるための早期診断、早期治療、新しいハンセン病戦略を始めました。

参照情報
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/