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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

土壌伝播寄生虫症

<アフリカの子供の小腸から取り出された回虫> CDC

人の腸管に寄生する蠕虫(ぜんちゅう)で湿った土壌を介して感染することからこの名称がつきました。その代表的なものが回虫、鉤虫、鞭虫です。感染能力を有する虫卵や幼虫に汚染された不衛生な食物を食べることで感染します。寄生虫の種類によって、貧血や栄養失調、腸閉塞など様々な症状が現れます。熱帯・亜熱帯地域のサハラ以南のアフリカ、中南米、中国及び東アジアなどの地域で高い感染リスクがあり、2016年世界保健機関(WHO)が発表したデータによると、世界で15億人以上の感染者がおり、全人口の約24%に匹敵します。

感染原因

病原体

寄生蠕虫の回虫(かいちゅう)、鉤虫(こうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)

宿主

 土壌伝播寄生虫症は、感染力を有する寄生虫の虫卵あるいはその幼虫がひそむ土壌を通して成虫が人の腸に寄生する病気です。このような寄生虫には、回虫、鉤虫、鞭虫の3種類が主要な種としてあります。これらの寄生虫は人の腸内で産卵し、産卵した卵が便とともに体外に排出されます。感染した人が屋外で排便したり、それを肥料に使用したりすると、回虫および鞭虫の卵は土の中で感染できる状態に成長します。
 回虫と鞭虫は、感染力を有する虫卵あるいは幼虫が人の体内に入ることで感染します。一方、鉤虫卵には感染力はありません。卵が土の中で孵化し幼虫(成虫になる前の状態)となり感染可能な状態(感染幼虫)に成長して初めて、人の皮膚から侵入します。そして、鉤虫がひそむ土の上を裸足で歩くことにより感染します。ただし、鉤虫の中には幼虫が人の口から入ることで感染するものもあります。

症状

 軽い感染の場合には症状は現れません。しかし、いずれの寄生虫についても、重い感染や長期にわたる感染の場合には、腹痛、下痢、貧血、タンパク質欠乏、直腸脱、発育不良や認知能力の発達の遅れといった様々な症状が現れます。特に子供が重い感染を起こした場合には、鉄分やタンパク質の欠乏、また、栄養不良による成長障害が起きます。
 寄生虫の種類によって特徴的な症状は下記の通りです。

<アフリカの子供の小腸から取り出された回虫> CDC

回虫

 多数寄生すると腸閉塞をはじめとした腸の障害が生じます。特に子供に多く見られる症状ですが、成長障害の原因にもなります。幼虫は発育中に体内を移動し、肺に達すると咳などを引き起こすこともあります。

 
鉤虫

 鉤虫の幼虫が皮膚を通して体内に侵入する際に局部の肌が痒くなったり、赤くなることがよくあります。次いで体内に侵入すると、特に初めて鉤虫に感染した場合には胃腸障害が出ます。深刻な症状としては失血による鉄欠乏性貧血やタンパク質欠乏、およびそれらによる発育障害、認知機能障害などがあります。

 
鞭虫

 少数の寄生虫の感染ではほとんどの場合、症状はありません。深刻な感染では、粘液、血液、水分の混ざった下痢便が出て排便の痛みもあります。特に刺激臭のある下痢を起こすことが特徴的です。長期に亘って多数の寄生虫の感染が続くと、栄養不良や貧血、発育不全などをおこします。

 

治療方法

 土壌伝播寄生虫症は適切な処置で治療可能です。2013年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)が発表したデータによると、いずれの寄生虫についてもアルベンダゾールやメベンダゾールといった駆虫薬を投薬することがスタンダードな治療です。

診断方法

 検便をして寄生虫卵の存在有無を確認します。

 
治療方法

 大人も子供も同じ処方です。アルベンダゾールは食事とともに服用します。原虫ごとの具体的な処方は下記の通りです。

原虫ごとの服用する薬一覧

適用薬剤 / 疾患種 回虫 鉤虫 鞭虫
アルベンダゾール
メベンダゾール
イベルメクチン ×
バモ酸ピランテル × ×
 

予防方法

予防策としては下記のようなことが挙げられます。

  • 人糞が入った土に接触しないこと。
  • 食品に触る前には石鹸で手を洗うこと。
  • 子供達に感染予防策としての手洗いの重要性を教育すること。
  • 人糞を肥料にした野菜や果物は食べる前によく洗う、皮をむく、加熱して食べるなどの処置をすること。
  • 屋外で排便をせず、整備されたトイレを利用すること。
 

上記に加えて、鉤虫の予防として素足で土に踏み込まないことや、そのような土を誤って口にしないことが重要です。

感染リスクのある地域

 土壌伝播寄生虫症の感染リスク地域は、広範囲にわたります。衛生環境が整備されていない貧困国、温かく湿度の高い地域、とりわけ、熱帯・亜熱帯地域のサハラ以南のアフリカ、アメリカ、中国、アジアなどで高いリスクがあります。

推定感染者数

 2013年にCDCが発表したデータによると、回虫は約8~11億人、鞭虫は約6~8億人弱、鉤虫は約6~7億人が感染していると推定されます。

推定死亡者数

 重症の場合、腸内出血、食欲不振、下痢や赤痢、必須微量栄養素の欠乏などを原因とする栄養不良から死に至ることがあります。外科的処置を必要とするイレウスなどを起こすこともあります。土壌伝播寄生虫症の中でももっとも多く見られる回虫による感染の場合、2011年のCDCが発表したデータによると年間6万人が死亡しています。

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

 WHO(世界保健機関)では、土壌伝播寄生虫症の感染率がコミュニティの住民人口の20~50%の地域には毎年、50%以上の地域では半年ごとの投薬治療を受けることを推奨しています。2001年に、WHOは2010年までに感染危険地域の学童の75%に対しアルベンダゾールとメベンダゾールを使用して駆虫を実施することを決めました。この活動は現在も進行中で、多くの成果を挙げています。
 2015年には、流行地域に住む就学前の児童および学童3億6千万人以上(当地域の児童の63%に相当)が投薬治療を受けました。WHOは、2020年までに土壌伝播寄生虫症によって死亡する子供をゼロにすることをめざしています。これは、流行地域の子供たちの少なくとも75%(8.73億人と推定)が定期的な治療を受けることで達成できると見込んでいます。
 グラクソ・スミスクライン(GSK)とジョンソン・エンド・ジョンソンはそれぞれ薬剤の無償提供を下記のように実施することを約束しています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)

1998年、GSK社は公衆衛生問題の一つとしてリンパ系フィラリア症の世界的制圧まで無期限でアルベンダゾールを、WHOを通じて蔓延国に無償提供することを決めました。2010年には学童の土壌伝播寄生虫症感染防止のために、WHOへのコミットメントを拡大し、毎年最大4億錠のアルベンダゾールを追加で提供することを決めました。これら二つの疾病と闘うために、GSK社はリンパ系フィラリア症制圧用に61カ国、土壌伝播寄生虫駆虫用に55カ国に、計50億錠以上の無償提供を行っています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、学校に通う子供たちの駆虫を目的としたベルモックス™(メベンダゾール)の無償提供プログラムを指導・監督する目的で、グローバルヘルスのためのタスクフォース(Task Force for Global Health)と協力し、寄生虫なき子供達(Children Without Worms) を2006年に設立しました。2012年からは無償提供錠の剤数を毎年2億錠に増やし、その活動を2020年まで延長して実施します。このさらなるコミットメントはSTH(土壌伝播寄生虫の略号)同盟の拡大に同調するものです。STH同盟は幅広い領域を代表する団体が協力して土壌伝播寄生虫症感染に取り組み、子どもたちが健康で彼らの可能性を最大限に発揮できる世界を構築することをめざしています。

参照情報
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/