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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

胞虫症

 終宿主である犬やキツネの糞便中に出現する単包条虫または多包条虫の虫卵を、経口摂取することによって発症する感染症です。虫卵は摂取した人の体内で包虫(Hydatid cyst、エキノコックスともいう)になり、感染後、長い無症状期を経て、主に肝障害を引き起こします。多包虫症の場合は、放置すると死に至ります。一方、単包虫症の死亡率は多包虫症に比べてきわめて低いです。単包虫症・多包虫症あわせて世界中で100万人以上の感染者がいると推定されています。

感染原因

病原体

寄生蠕虫のエキノコックス属条虫

<犬の体内で発見されたエキノコックス属条虫の成虫の顕微鏡写真> CDC

宿主

終宿主はキツネや犬、人は中間宿主

 包虫症(エキノコックス症とも呼びます)は、寄生蠕虫のエキノコックス属条虫の幼虫が動物に媒介され人に感染する病気です。エキノコックス属の条虫(サナダムシとも呼ばれます)が犬やキツネに寄生し、便に含まれる条虫の虫卵が、人の体内に摂取され、内部の六鉤幼虫から形成された包虫が肝臓を中心とする臓器に寄生することで発症します。
 包虫症には単包虫症と多包虫症があります。

【単包虫症】

 単胞条虫の包虫(中間宿主内で虫卵から孵化し、発育した幼虫)により発症します。単包条虫は、2~7mm程度の大きさの条虫で犬(終宿主)に、またその包虫は、羊、牛、山羊、豚(中間宿主)に寄生しています。人への感染では単包虫症がもっとも多く見られます。

【多包虫症】

 多胞条虫の包虫により発症します。多包条虫は、1~4mm程度の大きさの条虫で、キツネ、コヨーテ、犬(いずれも終宿主)に寄生しています。ネズミ、リスといった小齧歯類(しょうげっしるい)が中間宿主です。

症状

単包虫症

 単包虫の胞嚢はゆっくりと成長するため、症状が現れるまで何年もかかることがあります。しかし、無症状の間も胞嚢は肝臓や肺をはじめとした臓器で成長し続けています。
 胞嚢が成長すると、上腹部や胸の痛み、不快感、悪心、嘔吐、咳といった症状が現れます。まれに胞嚢が破裂すると、アレルギー反応が出現し、死に至ることもあります。

 
多包虫症

 単包虫症と同様に、多包虫症も胞嚢の成長が遅いため何年も無症状のままですが、胞嚢は外生出芽という方法で発育しますので、他臓器に転移することもあります。胞嚢が成長すると、上腹部の痛みや不快感、衰弱、体重減少といった症状が現れます。肝臓ガンや肝硬変に似た症状が現れることもあります。従って、臨床的には肝臓の悪性腫瘍と同様の扱いをします。
 多包虫症は動物に発症することがほとんどですが、稀に人に発症した場合は、肝臓や肺、脳といった臓器に腫瘍様病変を形成し、放置すると死亡率は約90%にのぼるという報告もあります。

 

治療方法

単包虫症

 X線やMRIといった画像撮影で臓器における胞嚢の存在有無を確認します。血液検査や免疫学的検査でも診断できますが、画像撮影の方が正確です。
 従来は手術が唯一の治療法でしたが、近年では薬物療法や胞嚢穿刺、PAIR(穿刺・吸引・注入・再吸引)といった様々な方法が採用されています。ただし、手術が必要なケースでは、手術後に胞嚢の再発生を抑制するために薬物療法を行う必要があります。
 薬物では、アルベンダゾール、プラジカンテルといった駆虫薬を使用します。

 
多包虫症

 血液検査で多包虫に対する抗体の存在有無を確認します。治療は手術で取り除いた後に胞嚢の再発生を抑制するために薬物療法(アルベンダゾール、プラジカンテル)を行います。

 

予防方法

 単包虫症・多包虫症いずれの場合も、以下の点に気をつけて感染を予防します。
・感染予防のために手洗いの重要性を子供たちに教育すること
・ペットが感染したと思われる時には、獣医に相談すること
・犬や猫を触った後や食品を触る前に、お湯と石鹸で手をしっかり洗うこと

単包虫症

 羊や牛に単包虫が発見された地域に住んでいる場合には、上記に加えて下記の予防策をとります。
・犬を飼っている場合には放し飼いにしないことと、羊、牛、豚、ヤギなどの生肉を与えないこと
・自宅で羊などを屠殺して食肉にしないこと

 
多包虫症

 齧歯類や犬に多包虫が発見された地域に住んでいる場合には、上記に加えて下記の予防策をとります。
・キツネ、コヨーテ、野犬を素手で触らないこと
・野犬をペットとして飼わないこと
・犬や猫が野ネズミなどの齧歯類を食べないように放し飼いにしないこと

 

感染リスクのある地域

単包虫症

 アフリカ、ヨーロッパ、アジア、中東、南アメリカで発生しています。羊を飼っている地域でもっとも流行しています。単包虫症が常に存在している地域では、人への感染率は10万人あたり50人以上にのぼり、アルゼンチン、ペルー、東アフリカ、中央アジア、中国では地域により有病率が5%~10%に達します。

 
多包虫症

 全世界で感染が見られますが、もっとも多いのは北半球です。中央ヨーロッパ、中国、中央アジア、日本、北アメリカからの報告があります。

 

推定感染者数

 単包虫症・多包虫症あわせて世界中で100万人以上の感染者がいると推定されます。

推定死亡者数

単包虫症

 単包虫症では手術後の死亡者は平均2.2%、再発者は6.5%と推定されています。単包虫症全体での死亡者数は明らかではありませんが、感染者の約2~4%と推定されています。

 
多包虫症

 放置すると90%以上が死に至ると推定され、死亡者の多くは中国西部に集中しています。

 

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

 WHO(世界保健機関)では、単包虫症の制圧に向けた戦略を検証するために、2018年までにそのプロジェクトを実行する3カ国を選定する作業を進めています。実施国の確定後は、その戦略に則って単包虫症の制圧と除去を実施することが最優先課題となります。
 また、単包虫症の流行地域において、医師やそのほかの医療関係者に対して、臨床上のトレーニングを行い、能力強化を支援しています。

参照情報
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/