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社会問題でもある 顧みられない熱帯病について

ブルーリ潰瘍

<ブルーリ潰瘍の様子> Wikimedia

熱帯および亜熱帯地域で蔓延する、主に手足に潰瘍ができる感染症。放置すると壊死状態になり、骨にまで影響がおよんで酷い変形に至ることもあります。初期段階における適切な薬物治療で、手術をせず完治できる傾向にあります。
熱帯、亜熱帯および温帯性気候のアフリカ、南米および西大西洋地域の33カ国以上で感染が認められ、2015年には13カ国において2037例の新規感染例が報告されました。

感染原因

病原体

細菌のマイコバクテリウム・ウルセランス

媒介生物

水中昆虫、蚊、刺咬性節足動物(昆虫類、甲殻類、クモ類、ムカデ類など)と考えられています。

<クモ類など>
James Gathany
CDC

 ブルーリ潰瘍の病原体は、マイコバクテリウム・ウルセランスという細菌(以下“M.ウルセランス”と表記)です。この細菌は、ハンセン病結核を引き起こす細菌と同じ仲間に属します。
 M.ウルセランスは、皮膚の傷口や虫に刺された咬み傷などから皮下に侵入し、時に骨まで浸食していきます。M.ウルセランスは、マイコクラトンという毒素を産み出し、この毒素が細胞組織を破壊し、免疫機能を妨げます。感染経路はいまだ完全に解明されていませんが、水中昆虫、蚊、刺咬性節足動物(昆虫類、甲殻類、クモ類、ムカデ類など)が宿主や媒介生物となっていると考えられています。

症状

 ブルーリ潰瘍の症状には、活性期と不活性期の2段階があります。

<ブルーリ潰瘍の様子> Wikimedia

活性期

 非潰瘍性の症状と潰瘍症状があります。
 ブルーリ潰瘍にかかると、皮下に白い突起が現れ、周囲の皮膚が厚く黒ずんでいきます(非潰瘍性の状態)。この症状は主に手足に現れ、かつ下肢で多く見られます。まれに顔の浮腫として症状が現れます。
 多くの場合痛み等がないため、病気を治療せず放置すると病状は進行し、皮膚や軟組織を広範囲に破壊し、突起は大きな潰瘍へと成長していきます。骨まで影響がおよぶ場合、著しく外観が変形する場合や、機能障害に至る場合もあります(潰瘍症状)。ブルーリ潰瘍が流行している地域では、70%以上の患者に潰瘍症状が見られます。

 
不活性期

 過去の感染によって、星形にへこんだ傷跡が皮膚にできている状態です。後遺症がある場合とない場合があります。

 

治療方法

 WHO(世界保健機関)では、病気のいずれの段階においても、ストレプトマイシンまたはアミカシン(いずれも抗生物質で筋肉注射により投薬します)と、リファンピシンを8週間投薬する併用療法を初期治療として推奨しています。近年の臨床試験では、初期段階におけるこの2剤療法は効果が高く、手術をしないで完治できる割合も高くなっています。さらには、この療法により感染の再発率もほぼゼロとなっています。
 病状が進行すると、壊死組織の切除や変形した部位の整形や皮膚移植といった外科手術を行います。手術後の病変部位は乾燥やひび割れを起こしやすく、また、太陽光線のダメージを受けやすいので、保湿やマッサージ、圧迫包帯をしておくなどのケアが必要です。

妊婦の場合

 胎児への影響を考慮し、リファンピシンとクラリスロマイシンの併用療法、もしくは、リファンピシンとモキシフロキサシンの併用療法が処方されています。

 
HIV/AIDS感染の場合

 免疫機能が弱まるため潰瘍がより進行しやすくなります。ブルーリ潰瘍とHIVの両方に感染している患者は、複数の病変や骨髄炎を発症する傾向にあります。ブルーリ潰瘍とHIVを併発している場合には、結核とHIVの併発に関するガイドラインに従うことが推奨されています。

 

予防方法

 ブルーリ潰瘍の感染を予防するためのワクチンは、現在研究段階です。短期間での予防目的には特定のワクチン(BCGワクチン)が使用されています。
 症状や障害を最小限に抑えるためには、住民の健康教育を行い、症状の早期に発見することが重要です。現在、ブルーリ潰瘍の医療施設での診断方法はなく、診断は研究室で行われます。通常、行われている診断方法は特定のDNAを同定する遺伝子増幅法(PCR法)です。PCR法は最も正確な検査方法で、48時間以内に結果が得られます。

感染リスクのある地域

 一般的に、ブルーリ潰瘍は、森林伐採や採掘など、何らかの環境的変化が伴う地域で多く見られます。
 ブルーリ潰瘍は、アフリカ、南米、西太平洋を中心とした熱帯・亜熱帯・温帯性気候地域の最低でも33カ国で報告されています。なかでも、アフリカ中西部のベナン、カメルーン、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガーナからの報告が多くを占めています。近年はオーストラリアから報告される患者数が増加しています。

推定感染者数

 この疾患に対する調査が不十分であること、また診断が困難なことから正確な数値は特定できませんが、世界33カ国以上で見られ、そのうち15カ国で毎年5000〜6000例が報告されています。

推定死亡者数

 早期の段階での診断や治療によって死亡率は低下していると推定されます。具体的な推定死亡者数は不明ですが、ブルーリ潰瘍が死因となることはまれです。しかし、完治しても大半の人には機能障害が残ります。

製薬会社・NGOなどの取り組み事例

 WHOや蔓延国政府、NGOによる取り組みが開始されたのは、日本財団の援助等によりブルーリ潰瘍の制圧と研究を行うための対策組織であるGlobal Buruli Ulcer Initiative(GBUI)が設立された1998年です。2004 年5月に開催された世界保健総会(World Health Assembly)では、ブルーリ潰瘍に対する監視とコントロールを改善し、研究と治療の確立を加速させることが決議されました。リファンピシンとストレプトマイシンの併用療法もここで採択されました。
 2009年には、アフリカの流行国の政府や保健機関が集まり、「コトヌー(Cotonou)宣言」が採択されました。ここには、WHOのブルーリ潰瘍制圧活動に対し必要な対策を講じることが宣言されています。
2012年のロンドン宣言において、WHOは2015年までに経口抗菌剤療法の開発を開始し、2020年までにすべての蔓延国における抗菌剤療法の普及率を70%までに引き上げることをめざしています。

サノフィ

 ブルーリ潰瘍をはじめ、他の4つの顧みられない熱帯病(アフリカ睡眠病リーシュマニア症シャーガス病風土性トレポネーマ症)について、2001年よりWHOと協力して支援活動を展開しています。この協力体制は2006年と2011年に見直しされ、2001年から2016年にかけて、これらの疾患制圧活動に対して合計7500万ドルの経済的支援や薬剤無償提供を行なうことを発表しています。また、トーゴおよびベナンといったブルーリ潰瘍の流行地域では、各地域の厚生省や保健機関との協力のもとで、ブルーリ潰瘍の認知の向上、医療関係者のトレーニング、患者の早期発見、障害者のリハビリなどのサポートを行っています。

参照情報
WHO- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.who.int/neglected_diseases/mediacentre/factsheet/en/
CDC- Neglected Tropical Diseases, accessed March 19, 2014,
http://www.cdc.gov/globalhealth/ntd/diseases/