顧みられない熱帯病と三大感染症について

「制圧しなければならない熱帯病」

「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases 以下NTDs )」 とは、WHO(世界保健機関)が「⼈類が制圧しなければならない熱帯病」としている21の疾患のことを指します。主に熱帯の貧困地域を中心に、世界で約16億人がNTDsの感染のリスクにさらされています。NTDsは貧困による劣悪な衛生環境などにより蔓延し、労働力や生産性の低下を招き、貧困から脱出できない原因にもなっています。重度の身体障害が残り、経済活動や社会生活に支障をきたす場合がある他、死に至ることもあり、開発途上国や新興国では経済成長の妨げともなりうる重大な課題の一つです。WHOにより、デング熱・チクングニア熱、狂犬病、トラコーマ、ブルーリ潰瘍、風土病性トレポネーマ症、ハンセン病、シャーガス病、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)、リーシュマニア症、条虫症・嚢虫症、メジナ虫症(ギニア虫症)、エキノコックス症(包虫症)、食物媒介吸虫症、リンパ系フィラリア症、オンコセルカ症(河川盲目症)、住血吸虫症、土壌伝播寄生虫症、マイセトーマ(菌腫)、疥癬、蛇咬傷、ノーマの21種疾患がNTDsとして指定されています。 

21の顧みられない熱帯病とは?

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「ロンドン宣⾔」から、NTDs制圧・撲滅に向けて共闘開始

2012年1月30日、エーザイを含む製薬企業13社*1のCEO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、WHO、米国国際開発庁(USAID)、英国国際開発省(DFID)、世界銀行、NTDsの蔓延国政府がロンドンに一同に会し、NTDs10疾患*2を制圧すべく共闘することを表明しました。これは当時、NTDs制圧に向けた最大の国際官民パートナーシップであり、これまでの組織単位、疾患ごとのアプローチとは異なり、この新しい連携により、医薬品供給、物流、開発、インフラなどにおける課題に包括的に取り組み、より効果的にNTDs制圧を成し遂げることを目標としました。製薬企業は、2012年のロンドン宣言以降、2020年までの間に140億人分もの高品質な治療薬を無償提供してきました。この間、国際官民パートナーシップによるNTDs制圧活動により、20のNTDsのうち少なくとも一つのNTDが46カ国で制圧され、6億人に対するNTDs治療が完了するなど、多くの成果があげられた一方、世界では未だ16億人の人々がNTDsの感染リスクにさらされています。

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    アッヴィ、アストラゼネカ、バイエル、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、エーザイ、グラクソスミスクライン、ギリアド、ジョンソンアンドジョンソン、メルク(Merck KGaA:ドイツ)、MSD、ノバルティス、ファイザー、サノフィ
  • 2
    メジナ虫症(ギニア⾍症)、リンパ系フィラリア症、トラコーマ、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)、ハンセン病、土壌伝播寄生虫症、住血吸虫症、オンコセルカ症(河川盲目症)、シャーガス病、リーシュマニア症

「ロンドン宣言」から「キガリ宣言」へ

キガリ宣言は、2012年のロンドン宣言の後継としてNTDsの制圧に向けてステークホルダーズが共闘を誓うことを目的とし、2022年6月にルワンダ共和国の首都キガリにおいて開催された「マラリアとNTDsに関するキガリ・サミット」にて正式に発表されました。キガリ宣言では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)目標3.3に掲げるNTDs制圧ターゲット、ならびにWHOが主導するNTDsロードマップ2021-2030の達成に向けて、2030年までに、2つのNTDsを根絶、100カ国において少なくとも1つのNTDsを制圧、そしてNTDsの治療介入を必要とする人を90%減らすことをめざしています。人を中心としたアプローチによる産官学民のパートナーシップを通じて、疾病・分野横断的アプローチの推進、ヘルスシステムの構築と資金調達を含む蔓延国における能力強化、NTDs治療薬・診断薬の研究開発の加速とそれらの供給の確保などの課題に取組み、包括的かつ持続可能な方法でNTDs制圧を成し遂げることを引き続きめざします。